歌舞伎ファンや一般の読者の間でしばしば話題に上るのが、「七代目芝翫」と現在の「八代目芝翫」の違いです。同じ大名跡でありながら、二人が歩む芸道には明確な個性と方向性の違いが存在します。
七代目芝翫が『熊谷陣屋』の相模や『八重垣姫』などを代表作とする「人間国宝の女形」であったのに対し、2016年10月に名跡を継いだ八代目芝翫(前名・三代目中村橋之助)は、時代物の勇壮な武将や荒事、世話物の二枚目を演じる「立役(男役)」の第一人者です。『勧進帳』の弁慶や『義経千本桜』の知盛など、力強さと骨太な演技で劇場を沸かせています。
2016年に行われた「八代目中村芝翫、四代目中村橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助」の親子四人同時襲名披露興行は、歌舞伎史に残る快挙として大きな話題を呼びました。女形から立役へと芸の領分は異なれど、七代目が生涯をかけて守り抜いた「成駒屋の風格と誠実な芸」は、八代目とその息子たちの舞台の中に力強く息づいています。