鼓膜が破れる瞬間の感覚は、原因や状況によって大きく異なります。最も多い外傷性のケースでは、綿棒や耳かきが奥に突き刺さった瞬間に「バシッ」「プチッ」という破裂音とともに、目の前が真っ白になるような鋭い激痛が走ります。鼓膜には三叉神経や迷走神経などの知覚神経が細かく張り巡らされているため、物理的な刺激がダイレクトに加わると極めて強い痛みを引き起こすためです。
しかし、外傷であっても平手打ちや爆発音などの「気圧外傷」では、一瞬の衝撃痛のあとに急速に痛みが引き、耳の詰まり感や耳鳴りだけが残ることも珍しくありません。また、急性中耳炎で鼓膜の奥に膿が溜まり、圧力に耐えかねて鼓膜が自然に破れた場合、膿が外へ排出されたことで中耳の内圧が下がり、「破れた瞬間にかえって痛みが軽くなった」と感じるケースすらあります。
さらに、鼓膜から出血しているのに痛みなしという状態は、破れた瞬間の痛覚刺激が過ぎ去った後であるか、神経の分布が薄い中心部が薄膜状に裂けた際に起こり得ます。「痛くないから大した傷ではない」と自己判断するのは禁物です。