看板商品に冠されている「フィレオ」という名称の原点は、1960年代のアメリカで誕生した「フィレオフィッシュ」にあります。そのマックにおけるフィレオの英語表記は「Filet-O-Fish」。中央の「O」は、英語の前置詞「of」を口語的に短縮したアポストロフィ付きの表現(o')に由来しており、直訳すれば「魚のフィレ(Filet of Fish)」を意味します。
語頭の「フィレオ(Filet)」のルーツをたどると、フランス語の「filet(フィレ)」に行き着きます。料理の世界におけるフィレ肉・切り身の意味とは、骨や筋を丁寧に取り除いた高級部位や正肉のブロックを指す言葉です。これが英語圏で「fillet」として定着し、マクドナルドではあえてフランス語由来の瀟洒なスペル「Filet」を採用することで、上品で高品質な白身魚のサンドイッチであることをアピールしました。
しかし、日本国内において「フィレオ」という言葉は独自の進化を遂げています。本来は魚や肉の「骨なしの一枚切り身」を指す単語であったにもかかわらず、2005年に日本マクドナルドが独自開発した「えびフィレオ」の登場によって、国内の消費者には「サクサクの揚げパティを挟んだ特製サンド」の代名詞として認知されるようになりました。エビは部位としての切り身が存在しないため、言語的には一種の矛盾を孕みつつも、ブランドネームとしての親しみやすさが勝った好例です。