最終決戦の直後、死の淵に立たされた竈門炭治郎を襲ったのは、あまりにも残酷な運命だった。無惨の肉体が滅びゆく瞬間、残り与えられたわずかな血と細胞のすべてが炭治郎へと注ぎ込まれたのだ。それは単なる暴走ではない。千年の執念を凝縮した遺伝子の強制注入であり、自らの代わりに鬼の血統を生き永らえさせようとする無惨の最期の悪あがきであった。
自我を失った炭治郎は、鋭い爪と牙を剥き出しにし、直前までともに戦った仲間たちへと襲いかかる。しかし、その結末を決したのは力によるねじ伏せではなかった。栗花落カナヲが命がけで投薬した藤の花の薬、そして亡き家族や生存する鬼殺隊の仲間たちが差し伸べた心の手に引き上げられ、彼は精神の深淵で無惨の誘惑を拒絶。見事に人間としての意識を取り戻すに至った。