SNSや動画サイトでは「メラミンスポンジで擦れば一瞬で壁紙が白くなる」という情報が拡散されています。しかし、原状回復の現場で作業する職人やハウスクリーニングのプロは、壁紙に対するメラミンスポンジの使用に強い警鐘を鳴らしています。
メラミンスポンジ(商品名:激落ちくん等)は、硬質なメラミンフォームの極小骨格で表面を削り取る「超微細なヤスリ」です。一般的な日本の住宅で使われているビニールクロスの表面には、防汚コーティングや繊細なエンボス(凹凸)加工が施されています。メラミンスポンジで強く擦ると、ヤニ汚れだけでなくクロス自体のコーティング層やテクスチャを物理的に削り取ってしまいます。
結果として、乾いた後にその部分だけ不自然なテカリや摩擦跡が残り、斜めから光が当たった際に「まだら模様」として浮き彫りになってしまいます。賃貸の退去立ち会い検査員は光の反射で壁紙の摩耗状態を細かくチェックするため、かえって「クロスの破損」として張り替え請求の対象にされるリスクがあるのです。
また、強力な漂白力を持つオキシクリーン(酸素系漂白剤)を壁紙に使用する際にも厳格な注意が必要です。オキシクリーンは40〜60℃のぬるま湯に溶かすことで活性酸素を放出し、色素を分解します。しかし、溶液の濃度が濃すぎたり放置時間が長すぎたりすると、壁紙自体の接着剤(糊)を分解して壁紙の浮き・剥がれを引き起こすほか、下地の石膏ボードに水分が吸着してカビの温床となる危険性があります。色柄ものの壁紙では色落ちの原因にもなるため、必ず目立たない部屋の隅でパッチテストを行ってから使用してください。