暗闇がもたらす異変は、視覚器の病理にとどまらない。暗がりを前にした際に理性を失うほどの恐怖に襲われる「暗所恐怖症(ニクトフォビア)」を抱える当事者たちの叫びは、SNSや医療相談プラットフォームでも深刻さを増している。
都内のIT企業に勤務する30代女性は、自らの手記や取材に対して次のように当時のパニックを振り返っている。
「会社の研修施設でプロジェクター投影のために突然部屋が消灯された瞬間、まるで底なし沼に沈められたような感覚に襲われ、過呼吸でその場に倒れ込んでしまいました。同僚からは『大げさな』『お化けでも怖がっているのか』と笑われましたが、本人は窒息死する寸前のような激痛と絶望感に包まれていたのです」
ネット上の掲示板や知恵袋でも、「寝室の豆電球が切れただけで冷や汗が止まらなくなる」「映画館の鑑賞券を買っても暗転した瞬間にロビーへ逃げ出してしまう」といった声が数多く散見される。世間では混同されがちだが、閉所暗所恐怖症違いは明確に整理されている。
閉所恐怖症(クラウストロフォビア)が「狭い空間に閉じ込められ、逃げ場を失うことへの拘束感」を根源とするのに対し、暗所恐怖症は「視覚情報が失われることで周囲の危険を予測・制御できなくなることへの無力感」が引き金となる。幼少期の暗闇への閉じ込め体験や過度な精神的ストレス、あるいは対象喪失に伴う強い不安が、大人になっても扁桃体の過剰興奮として固定化しているケースが多い。