敷地内に入ると、鮮やかなクメール様式の破風と尖塔が青空に映える広大な空間が広がります。カンボジア王宮の所要時間は全体で約1時間30分〜2時間が標準的であり、その中心となる二大巨頭が「即位殿」と「シルバーパゴダ」です。
正門を抜けて正面に見えるのが、1919年にフランス人建築家とクメール人技師の共同設計によって再建された即位殿(プレア・ティネアン・テヴィア・ヴィニチャイ)です。中央にそびえる高さ59メートルの尖塔には、アンコール・トムのバイヨン寺院を彷彿とさせる四面仏の顔が刻まれています。現在でも国王の戴冠式や国賓の歓迎式典が執り行われる最高格式の建物であり、内部には黄金に輝く王座が鎮座しています。
そして、王宮敷地の南側に位置するシルバーパゴダ(正式名称:ワット・プレア・ケオ・モロコット)こそ、王室の富と信仰の精華が集結した必見スポットです。この寺院が見どころとされる理由は、文字通り圧倒的な装飾と国宝級の仏像群にあります。
- 5,000枚以上の銀(シルバー)タイル:本堂の床一面には、1枚あたり約1.125kgの純銀プレートが5,329枚も敷き詰められています。現在は保護用のカーペットが敷かれていますが、一部露出しているエリアでその本物の銀の重みと輝きを直に視認できます。
- エメラルド仏(翡翠仏):本堂中央の高台に祀られているのは、17世紀に作られたとされるバカラ製クリスタル(または上質な翡翠)で彫出された神秘的な緑色の仏像です。
- 9,584個のダイヤモンドが輝く等身大黄金仏:1906年にノロドム国王の遺志によって制作された「マイトレーヤ(弥勒菩薩)仏」は、重量約90kgの純金で作られ、胸元には25カラットを超える巨大ダイヤモンドをはじめとする9,584個の宝石が散りばめられています。
さらに、シルバーパゴダを取り囲む回廊の内壁には、インドの古代叙事詩『ラーマーヤナ』のクメール版である『リアムケー』の壮大な物語が、数百メートルにわたる鮮麗な壁画として描かれています。経年劣化や過去の内戦を乗り越え、現在も修復と保護が進められているこの壁画は、クメール美術の最高峰として一見の価値があります。