昭和30年代、細木数子は若干20代前半にして東京・銀座にクラブを構え、夜の街にその名を轟かせた。当時の彼女を知る関係者が口を揃えるのは、その息をのむような美貌だ。つややかな黒髪と凛とした目元、和服を完璧に着こなす立ち振る舞いは、店を訪れる政財界の重鎮や文化人たちをひと目で魅了したという。
しかし、彼女の真の凄みは単なる外見の美しさにとどまらない。大物たちが夜な夜な集う社交場で、度胸と鋭い頭脳を武器に渡り歩いた。店の切り盛りはもちろん、客の人間模様や本音を冷徹なまでに見抜く眼力は、この銀座のクラブママ時代に極限まで研ぎ澄まされたのだ。