危険人物を排除すべく立ち上がったのが、ロシア屈指の資産家であった貴族フェリックス・ユスポフ公爵を中心とする若い将校グループだった。1916年12月の寒い夜、ユスポフ宮殿の地下室へと誘い出された怪僧は、ついに帰らぬ人となる。
後年、亡命先のパリで回想録を出版したユスポフは、死闘の模様を極めてドラマチックに描写した。だが、その過剰な演出と脚色が今なお解けない歴史ミステリーの迷宮を作り出したのも事実だ。英国の工作員が背後で関与していたとする陰謀説まで飛び交い、事件の謎は今日に至るまで歴史家たちの議論を刺激し続けている。