透明水彩で雲を描く最大の利点は、水のにじみを活かした柔らかいグラデーションが手軽に得られる点です。しかし、水分量の調整を誤るとムラになったり、意図しない輪郭(バックラン)ができたりします。水彩画で雲を美しく描く基本は、あらかじめ紙を水で湿らせておく「ウェット・オン・ウェット(濡らし絵技法)」です。
青空を塗る際、雲を描きたい部分に水を含ませた刷毛で先回りして湿らせ、その上から青を流し込むと、境界線が自然に溶け出して柔らかな綿雲の輪郭が生まれます。雲の輪郭すべてをぼかすのではなく、「光が当たってくっきり見えるエッジ」と「空に溶け込む柔らかなフチ」を混在させることが、手描きならではのリアリティを作る秘訣です。
また、透明水彩には白絵の具をほとんど使わず、紙の白さをそのまま活かす「リフティング(拭き取り技法)」と「マスキングインクによる白抜き」があります。青空を一面に塗った直後、水気を絞った筆やティッシュペーパーで絵の具をトントンと吸い取るリフティングは、光り輝く雲のハイライトを作る最も直感的で失敗の少ない手法です。