ガイドブックを片手に訪れる外国人観光客の姿も今や日常の光景となった。彼らが求めているのは、単に「おいしいコーヒー」を飲むことだけではない。下町の路地裏に溶け込む店舗の佇まい、使い込まれた焙煎機のメカニカルな美しさ、そして地域の人々と店員が交わす他愛のない会話――そのすべてを含めたローカルな空気感である。
欧米やアジアの都市部でもスペシャリティコーヒーは一般化したが、「自分だけの豆をその場で煎ってもらい、紙袋に詰めて持ち帰る」という体験は極めて日本的だ。旅の土産として持ち帰る珈琲豆は、自宅のキッチンで挽くたびに東京の路地裏の風景と香りを蘇らせる。体験型観光が主流となった2026年の旅行市場において、この本物志向の体験価値は計り知れない。