言葉を話せない乳児でありながら、豊かな感情表現で視聴者を惹きつける大きな要因が、野原ひまわり 声優を務めるこおろぎさとみ氏の卓越した演技力です。
当時のインタビューや声優業界の証言によると、ひまわりの台本には一般的なセリフはほとんど記載されておらず、「(笑う)」「(怒る)」「たいや、たいやー!」といった感情のト書きが大半を占めています。こおろぎ氏は、わずかな喃語(乳児特有の声)のイントネーションの違いだけで、歓喜、企み、落胆、怒りを完璧に演じ分けてきました。
基本的に人間の言葉を喋らないひまわりですが、ファンの間ではひまわりが喋る回がたびたび話題にのぼります。テレビアニメの夢オチ回や番外編のファンタジーエピソードでは、流暢な日本語を操る場面が存在します。特に初期のエピソードにおいて、しんのすけの夢の中で「お兄ちゃん」と呼ぶシーンや、後述する劇場版での大人の姿では、明瞭なセリフが与えられました。こおろぎさとみ氏自身が「赤ちゃんの声のまま言葉を話す難しさと面白さ」を手記で語る通り、その変幻自在な声の芝居は国内外のアニメーターからも高く評価されています。