薄暗い階段を上ると、煤けたアクリル看板と真鍮の手すりが眩いばかりの昭和へ観客を誘う。ネット上で絶えず流布する「閉鎖間近」や「全面解体」という噂の真偽を確かめるべく、現地取材を敢行した。結論から言えば、建物の一部では今なおバーや飲食店が営業を継続しており、完全な廃墟ではない。しかし、上層階の空室化が進んでいるのは紛れもない事実だ。
1960年代の高度経済成長期に誕生したこのビルは、夜の歓楽街として一世を風靡した。当時を知るベテランの店主は、「昔は階段を踏み外すほど人が溢れていた」と遠い目をする。築60年近くを経てなお崩壊を免れている構造体には、当時の贅を尽くした建築意匠が色濃く残る。現在、耐震診断や管理体制の見直しに伴う補修計画が水面下で進んでおり、急激な取り壊しではなく、保存と部分的な改修が模索されていることが独占取材で明らかになった。