十分に煮込んだはずなのに、なぜニンジンだけが主張を曲げないのか。その鍵を握るのが、植物の細胞同士を強固に接着している「ペクチン」という食物繊維の存在だ。ニンジンに含まれるペクチンは、加熱されることで水に溶け出し、組織が崩れて柔らかくなる性質を持つ。
しかし、ここに落とし穴がある。塩分や酸、あるいは糖分が煮汁の中に存在すると、ペクチンの分解反応が著しく阻害されてしまうのだ。市販のレシピ・料理ガイドでも度々注意喚起されているが、具材が柔らかくなる前にカレールウを投入してしまうと、ルウに含まれる塩分や粘度がニンジンの加熱を妨げ、いくら煮込んでも硬いまま固定化される現象が起きる。