彼女がメイクに興味を持ち始めたのは、20代前半の頃だ。それまでの「すっぴん」で競技に挑む姿から一転、アイラインを際立たせた洗練されたメイクへとシフトしたことで、世間の視線は一気に競技外へと向かった。スポーツ選手たるもの、競技だけに集中すべきだという古い価値観が、彼女の顔立ちの変化に対する過剰な反応を生み出したのだ。
だが、彼女にとってメイクは単なるおしゃれではない。極限の緊張感の中で戦うための「戦闘服」であり、自分自身のスイッチを入れるための儀式なのだ。海外のトップ選手たちが当然のように個性を表現する中、彼女もまた、自らの意志で自らの見せ方を選び取ったに過ぎない。