鈴木章氏の化学への情熱の原点は、豊かな北の大地にありました。
1930年(昭和5年)9月12日、北海道勇払郡むかわ町(旧鵡川町)に生まれた鈴木氏は、自然に囲まれた幼少期を過ごします。旧制鵡川尋常高等小学校から苫小牧中学校を経て、北海道大学理学部化学科へと進学しました。
北大大学院を修了して理学博士号を取得後、同大学の助教授に就任。1963年からは米国パデュー大学へ留学し、後にノーベル化学賞を受賞する有機ホウ素化学の世界的権威、ハーバート・ブラウン教授の研究室で研鑽を積みました。この留学経験が、鈴木氏の代名詞となる「ホウ素」との運命的な出会いをもたらします。
帰国後、北海道大学工学部の教授に就任した鈴木氏は、粘り強い実験と鋭い洞察力で研究を重ね、1979年に有機ホウ素化合物を用いる革新的なクロスカップリング反応を発表。退官後は岡山理科大学や倉敷芸術科学大学でも教鞭を執り、次世代の育成に情熱を注ぎました。