ガンダムを語る上で欠かせないのが、原作者であり総監督を務めた富野由悠季氏と安彦良和氏の稀有なパートナーシップです。二人は虫プロダクション時代からの旧知の仲でありながら、表現者としての思想やアプローチには明確な違いがありました。
富野氏が観念的かつ構造的な世界観や人間の業(ごう)を鋭角的に描こうとするのに対し、安彦氏は地に足のついた人間の情愛や歴史のうねりを描くことを重視しました。過去のインタビューにおいて安彦氏は、「富野さんのコンテは強烈だが、そのままでは人間が記号になりかねない。そこに肉体と生活感を与えるのが自分の役割だった」という趣旨の証言を残しています。
一方の富野氏も「安彦の絵がなければ、ガンダムという企画は成立しなかった」と公言して憚りません。時に意見を戦わせ、互いに強烈な対抗心を抱きながらも、根底では誰よりも相手の才能を信頼し合っている——この二大巨頭の緊張感ある共同作業があったからこそ、ガンダムは半世紀にわたって色褪せない奇跡の作品となり得たのです。