映画を唯一無二の傑作たらしめている最大の要因は、主演二人の凄まじい演技合戦と肉体的な説得力にある。妻テレサを演じたステファニア・サンドレッリは、ベルナルド・ベルトルッチ監督作などでも見せたコケティッシュな魅力と、成熟した大人の女性が漂わせる妖艶さを完璧に同居させた。彼女の圧倒的な肢体と、無垢でありながら残酷な視線は、観客の倫理観をいとも容易く揺さぶる。
対する夫ニーノを演じたのは、英国の名優フランク・フィンレイだ。シェイクスピア劇で鍛え抜かれた確かな表現力で、衰えゆく自己の肉体への恐怖と、妻を他人に抱かせることでしか得られない歪んだ興奮に苛まれる男の悲哀を鬼気迫る佇まいで熱演した。単なるエロティック・ドラマに堕することなく、老いと嫉妬、そして執着という普遍的な人間の苦悩が、フィンレイの深彫りされた表情の陰影から生々しく伝わってくる。