2013年10月、心不全のため94歳で他界したやなせたかし氏。その訃報は、長年彼を親しんできたファンのみならず、日本の文化界全体に大きな喪失感をもたらした。晩年まで現役の表現者であり続けた彼は、日本漫画家協会の理事長や理事を歴任し、出版界や漫画界の発展に心血を注ぎ続けた。
彼が『アンパンマン』の絵本を初めて発表したのは1973年。出版社である株式会社フレーベル館から刊行された当初、大人の批評家たちからは「自分の顔を食べさせるなんて残酷だ」と酷評されたという。しかし、現場の幼稚園や保育園の子供たちは瞬く間にこの異色のヒーローを愛した。児童文学の常識を覆したその感性は、彼の没後も色褪せることなく、今なお新世代の子供たちの心をとらえて離さない。