逆風が吹き荒れる中、彼女に最大の転機をもたらしたのは稀代のヒットメーカー・鈴木おさむだった。彼が地上波連ドラ引退作として脚本を手掛けたテレビ朝日の土曜ナイトドラマ『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』。この作品のヒロインである「不倫に溺れる悪嫁・岡谷綾香」役に、あえて渦中の篠田麻里子を指名したのだ。
まさに劇薬とも言えるキャスティングだった。プライベートの痛烈な記憶がまだ生々しい時期に、自らのパブリックイメージを逆手に取るような不倫妻役を引き受けること。それは女優生命を賭けた危険な賭けに他ならなかった。しかし篠田はこのオファーから逃げなかった。自身に向けられた世間の冷ややかな視線をすべて脚本の中に注ぎ込むかのように、彼女は圧倒的な覚悟でクランクインを迎えた。