厨房の指揮を執るインド人総料理長は、スパイスを単なる「辛味の調味料」として扱わない。食材ごとの水分量や脂の乗り方に合わせてホールスパイスを油でテンパリングする秒単位のタイミングを見極め、香りの層を立体的に構築していく。カルダモンの清涼感、クローブの重厚な深み、そしてシナモンがもたらす甘やかな余韻が、一皿の中で見事なグラデーションを描く。
市販のルーに頼る一般的なカレーとは一線を画すその仕上がりは、近年ブームを超えて定着したスパイスカレーの愛好家たちからも熱狂的な支持を集めている。油分を控えめに抑えながらも、じっくり炒め抜いた香味野菜と自家製ガラムマサラの力強さによって、驚くほど軽やかな後味と深いコクを両立させている点が、伝統的インド料理の枠組みをさらに押し広げている。