千林商店街の歴史を語る上で欠かせないのが、流通大手・ダイエーの創業者である中内㓛氏の存在です。1957年(昭和32年)、千林駅前にわずか数十坪の敷地で開業した「主婦の店ダイエー千林店」こそが、日本のスーパーマーケットの歴史の幕開けとなりました。
当時の中内氏は「よい品をどんどん安く売る」という信念のもと、既存の流通慣行やメーカー主導の価格設定に真っ向から立ち向かいました。近隣の薬局や個人商店との熾烈な価格競争(いわゆる「千林の価格戦争」)は全国的なニュースとなり、千林の名は「安売りのメッカ」として全国に轟くことになります。メーカーとの対立を恐れず消費者の利益を追求したこの闘争劇が、日本の流通構造を近代化させる決定的な契機となりました。
ダイエー千林店そのものは時代の変遷とともに役割を終えましたが、店舗跡地周辺には今も流通革命の息吹を伝える記念碑的な空気が漂っています。何より「良いものを1円でも安く提供し、客を喜ばせる」という商人魂は商店街全体の骨格となり、現在の活気へと直結しています。