阿蘇くじゅう国立公園の豊かな自然に抱かれた高森町には、独自の歴史が刻まれている。田楽の起源は遠く鎌倉から南北朝の動乱期、戦に敗れてこの地に落ち延びた名将・阿蘇惟直の家臣たちが、自給自足の生活の中で土地の作物を炭火で焼いたことに始まると伝えられる。厳しい山間部で生き抜くための知恵が、素朴にして贅沢な郷土の馳走へと昇華した。
この地域は、伝統的な野焼きや草原の維持、独特の農法が評価され、世界農業遺産 阿蘇地域として国際的にも高い評価を受けている。火山灰由来の黒ぼく土と、清らかな湧水が育む農産物は、どれも味が濃く力強い。NHK『新日本風土記』などのドキュメンタリー番組でも度々取り上げられるように、過酷な自然と共生しながら紡がれてきた阿蘇の食文化には、現代人が忘れかけた大地への敬意が満ちている。