ネット上の簡易解説などで散見される「分子式を約分したものが組成式」という説明は、有機化合物を扱う上では一部成立しますが、無機物質や高分子化合物を前にすると破綻します。
例えば、二酸化ケイ素(SiO₂)やダイヤモンド(C)などの共有結合結晶は、非金属元素同士が結合していますが分子を作りません。地球上に「SiO₂という形の独立した3原子分子」は基本的に存在せず、無数のケイ素と酸素が網目状に手を結んでいます。そのため、SiO₂は分子式ではなく組成式です。
また、ポリエチレンなどの合成高分子は、重合度(分子の長さ)が分子ごとに微妙に異なるため、厳密な単一の分子式を定めることができず、繰り返し単位を基にした組成式や高分子用の表記法が用いられます。「化学式=分子式」という固定観念を捨てることが、化学の構造理解における最初のステップです。