1980年代から90年代にかけて吹き荒れた熱狂のなかで、『スーパージョッキー』や『風雲!たけし城』といった伝説的なバラエティ番組は、お茶の間に強烈な刺激を届け続けた。ダウンタウンやとんねるずらが台頭したお笑い第3世代の熱気に満ちた時代にあって、井手らっきょが見せた体を張ったリアクションと徹底した裸芸は、まさに唯一無二の切れ味を放っていた。
生放送で何が起きるかわからない極限の緊張感。収録を終えて帰宅する夫は、生傷が絶えず、精神的にも極度の興奮状態にあることが日常茶飯事だったという。世間からどれほど「お騒がせ男」と指をさされようとも、妻は動じることなく温かい食事を用意し、夫が「ただの男」に戻れる安らぎの空間を作り続けた。その並外れた度量こそが、過激な芸風を貫くための見えない命綱だった。