AKB48絶対的エースとして駆け抜けた前田敦子の歴代写真集は、彼女の人間的成長と直結して語られます。なかでもファースト写真集『はいっ』(2009年、集英社)と、卒業前夜に刊行された『不器用』(2012年、小学館)は、アイドルグラビアの歴史に燦然と輝く金字塔です。
2009年1月にリリースされた前田敦子の写真集『はいっ』は、ハワイ・マウイ島で撮影が行われました。当時まだ17歳だった彼女の飾らない素顔、部活動の合宿を思わせるようなピュアな水着姿が収められており、発売当時は予約が殺到。オリコン写真集ランキングで初登場1位を獲得するなど、グループのブレイク前夜を告げる記念碑的タイトルとなりました。
そして彼女のキャリア最大のエポックメイキングとなったのが、2012年3月発売の前田敦子の写真集『不器用』です。全編フランス・パリで敢行された撮影は、氷点下に近い早朝のセーヌ川沿いや、歴史あるアパルトマンの室内など、徹底したロケーション主義で進められました。同作を手掛けた写真家・中村和孝氏のレンズ向こうで、前田敦子は少女から成熟した女性への過渡期に見せる一瞬の憂いを鮮烈に表現。オリコン週間ランキングで初週約4.2万部を売り上げ、年間写真集ランキングの上位を独走しました。
撮影裏話として有名なのが、『不器用』のロケで滞在した冬のパリでの出来事です。氷点下に迫る過酷な寒冷環境にもかかわらず、前田敦子は薄手のキャミソールやランジェリー姿での撮影に対して一切の愚痴を言わず、カメラが回る直前まで寒さに震えながらも、シャッター音が鳴った瞬間に鳥肌ひとつ立てず艶やかな視線を向けたと当時の制作スタッフは語っています。この並外れたストイシズムこそが、彼女を同世代の他のアイドルから決定的に引き離す要因でした。