岩間好一氏の人間味と指導力を示すエピソードとして、元エンジニアたちが口を揃えるのが「現場への徹底したリスペクト」です。社長就任後も背広を脱ぎ捨てて開発現場に頻繁に顔を出し、若い研究者の肩を叩いては「どうだ、泥水の中から何か掴めたか」と声をかけていました。
岩間氏の残した名言に「技術者は現場の泥水の中にしか真理を見出せない」「不可能を可能にするのがソニーの技術者だ」という言葉があります。机上の計算だけでなく、クリーンルームでゴミ一つと格闘する現場の苦しみを誰よりも理解していた指導者でした。
1982年8月24日、岩間氏は現職社長のまま、大腸がん(結腸がん)のため63歳の若さで逝去しました。あまりにも早い死を悼み、ソニーは同年、社内の優れた技術開発や発明を表彰する最高峰の賞として「岩間研究技術賞(通称:岩間賞)」を制定しました。後に「プレイステーションの父」と呼ばれる久夛良木健氏をはじめ、ソニーの屋台骨を支える数々のイノベーターたちがこの岩間賞を受賞し、世に出ていきました。
【プロの結論】失敗を恐れる現代企業が学ぶべき「死なないリスクテイク」の境界線
現代のビジネスパーソンや企業経営者が、岩間好一氏の生涯から学ぶべき本質的な教訓は何でしょうか。それは「長期的なコア技術への執念」と「短期的な収益圧迫」のバランスをどうマネジメントするかという組織論の命題です。
岩間氏のリーダーシップから導き出せる、変革に「向いている組織・リーダー」と「避けるべき組織」の判断基準は以下の通りです。
- 成功するイノベーション組織の条件:
- トップ自らが技術の原理原則を理解し、現場の技術者と共通言語で議論できる。
- 10年先を見据え、「撤退基準」ではなく「やり切るための資源配分」を腹を括って決められる。
- 失敗を咎めず、泥臭い実験や試行錯誤のプロセスそのものを組織の資産として評価する。
- 衰退を招く停滞組織の兆候:
- 四半期ごとの短期利益ばかりを重視し、3年で成果が出ない研究開発を次々に打ち切る。
- 財務・経理主導の減点主義が蔓延し、誰も前例のないリスクを取らなくなる。
- 現場の声を聞かず、経営陣が机上のレポートだけでプロジェクトの可否を判断する。