「柏樹関」での滞在を語る上で欠かせないのが、五感を研ぎ澄ます「食」と「祈り」のプログラムです。
館内の食事処「水仙」で提供される夕食は、大本山永平寺で食事を司る最高責任者「典座(てんぞ)」が監修した本格精進会席です。肉や魚、五葷(ネギ・ニンニク等)を一切使わず、昆布や椎茸から丁寧に引いた出汁、福井県産の旬の根菜、永平寺御用達の胡麻豆腐など、食材の命を余すところなく活かした料理が美しく供されます。また、一般的な宿坊とは異なり、夕食時には福井の厳選された銘酒やワインを嗜むことも認められており、肩肘張らずに贅沢な時間を堪能できます。
そして翌朝、滞在のクライマックスとなるのが「開山堂(かいさんどう)での朝のお勤め(朝課)」です。季節により開始時間は前後しますが、早朝5時30分または6時、張り詰めた朝の冷気の中、専用通路を通って静寂の永平寺境内へと歩みを進めます。
道元禅師を祀る開山堂に足を踏み入れると、薄暗い堂内に線香の薫香が立ち込め、数百年にわたり受け継がれてきた読経のうねりが堂内を激しく震わせます。観光客向けのデモンストレーションではなく、日々研鑽を積む雲水たちの真剣勝負の修行空間に身を置く体験は、日常で疲弊した思考を一瞬でクリアにする強烈なカタルシスをもたらします。
お勤めを終えて宿へ戻った後にいただく「朝粥(小皿の梅干しやごま塩とともに味わう一杯)」は、五臓六腑に染み渡る滋味深さがあり、多くの宿泊者が「生涯忘れられない朝食」と評しています。