気象庁が張り巡らせた高密度観測網は、列島の地下で起きている微小な異変を休むことなく捉えている。南関東の直下に沈み込むプレート境界周辺では、スロースリップをはじめとする非日常的な地殻変動データが蓄積され、科学者たちの警戒度を引き上げている。
東京大学地震研究所の平田直名誉教授は、今後30年以内に70%の確率で発生するとされる首都直下地震について、過密都市特有の脆弱性を繰り返し訴える。「揺れそのものの破壊力に加え、同時多発火災やインフラの途絶が複合的に襲いかかる。過去の経験則だけでは測れない事態を想定しなければならない」と平田氏は警鐘を鳴らす。
一方、京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏は、日本列島が現在「大地変動期」にあると位置づける。西日本の南海トラフと首都圏の活動期が重なり合うリスクを指摘し、都市部における火災旋風や長周期地震動への即応態勢が急務であると説く。
現在では緊急地震速報の検知アルゴリズムも劇的な進化を遂げた。深部断層の破壊初動をミリ秒単位で割り出し、主要動が到達する前のわずかな猶予を確保する。この数秒が生死を分ける。倒れやすい家具から身を離し、頭部を守る。極限状態での判断力が何よりも問われている。