蒸し料理の世界を牽引してきたのは、間違いなく時代を代表する料理家たちだ。中国・北京生まれのウー・ウェンは、長年にわたりシンプルかつ力強い蒸し調理の神髄を伝えてきた。彼女のレシピ本が教えるのは、調味料に頼りすぎず、素材の水分と蒸気の力だけで旨味を凝縮させる引き算の美学だ。豚肉の薄切りに少量の紹興酒と塩を揉み込み、千切り生姜とともに蒸し上げるだけで、驚くほど豊かな一皿が完成する。
対照的に、現代のカジュアルな食卓に寄り添う提案で絶大な支持を集めるのがワタナベマキだ。彼女のアプローチは軽やかで自由。主婦の友社をはじめとする主要出版社から刊行された著作群では、和洋中の垣根を越え、ハーブや柑橘、オリーブオイルを組み合わせたモダンな蒸し料理を提案している。NHKの長寿番組『きょうの料理』でも披露された彼女の段取り術は、下ごしらえからわずか10分で食卓を華やかに彩るアイデアに満ちており、忙しい現役世代のバイブルとなっている。