井口理さんのボーカルを語る上で外せないのが、最高峰の芸術大学である東京藝術大学音楽学部声楽科(テノール専攻)を卒業しているという異色のバックボーンです。日本のロックバンドのボーカルとしては極めて稀なクラシックの正統派教育を受けています。
息の混じった艶のあるファルセット(裏声)から、芯のあるチェストボイス、そして両者を滑らかに繋ぐミックスボイスまで、驚異的な声区融合は藝大仕込みの徹底した発声理論に裏打ちされています。力任せに張り上げるのではなく、喉を自然に開き、共鳴腔を最大限に活かした響きだからこそ、スタジアム規模の会場でも音が埋もれることなく観客の耳へ真っ直ぐ届くのです。
また、家庭環境も音楽的ルーツに深く関係しています。実兄である井口達(いぐち すぐる)さんは、ドイツを拠点に世界で活躍する気鋭の声楽家(バリトン歌手)です。ハイレベルな音楽一家で育ち、日常的にクラシックや合唱の美しいハーモニーに触れてきた経験が、音感の鋭さや繊細な表現力へと結実しています。
過去には酷使による声帯ポリープなどの喉のトラブルを経験し、喉の手術を決断した時期もありました。しかし、適切な治療と徹底したリハビリ、ボイストレーニングの見直しを経て復帰。術後は以前にも増して高音域のコントロール力と声の太さが増し、シンガーとしてのタフネスを確立させました。