世間では長年にわたり、「美輪明宏と三島由紀夫は恋人同士だったのか」という詮索が繰り返されてきました。美青年を好んだ三島の私生活や、美輪の中性的な美しさも相まって、ロマンチックな憶測が飛び交ったのは自然な成り行きだったともいえます。
しかし、美輪明宏本人が後年の対談や手記で明確に語っている通り、二人の間に通俗的な肉体関係や生々しい恋愛感情は存在しませんでした。そこにあったのは、肉欲を遥かに超越した「魂の交感」とでも呼ぶべき絶対的な精神の結びつきです。美輪は三島の並外れた知性と孤独、そして言葉の鋭さを誰よりも深く理解し、三島もまた美輪の持つ高潔な美意識と過酷な人生経験に裏打ちされた強靭な精神に畏敬の念を抱いていました。
二人は朝まで文学、演劇、音楽、そして美の本質について議論を交わし、互いの感性を研ぎ澄ませる知的な共犯者であり続けました。安易な恋愛関係に堕ちなかったからこそ、二人の絆は三島の生涯の最期まで純粋な結晶のまま保たれたのです。