映画の中で青と黄色のコントラストがひときわ目を引くドリーですが、その魚の種類はスズキ目ニザダイ科に属する「ナンヨウハギ(学名:Paracanthurus hepatus)」です。サンゴ礁に生息し、海水水族館でも常にトップクラスの人気を誇る熱帯魚として知られています。
映画を観ているだけでは分からない、現実のナンヨウハギには以下のような驚くべき生態的特徴が存在します。
- 尾ビレの付け根にある鋭利な毒針:ドリーはおっとりした性格ですが、本物のナンヨウハギは尾ビレの基部に格納式の鋭いトゲ(棘)を持っています。外敵に襲われた際にはこのトゲを立てて身を守り、人間が素手で触ると強い痛みを伴う怪我を負う危険性があります。
- 横になって眠る習性:ナンヨウハギはサンゴの隙間や岩肌に体を横倒しにして眠るという、魚類としては珍しい習性を持っています。水族館や飼育環境で初めてこの姿を見た来館者が「魚が死んでしまったのでは」と慌てるケースが多発するほどです。
- ストレスや成長による体色変化:幼魚の頃は鮮やかなレモンイエローが混ざっており、成長とともに深いコバルトブルーへと変化します。また、夜間や極度のストレスを感じた際には一時的に白っぽく退色する特徴もあります。
映画の大ヒット以降、観賞魚市場でナンヨウハギの需要が急増しましたが、人工繁殖が極めて難しく、その多くが天然採取に依存しているという環境課題も指摘されています。ドリーの愛らしさを楽しむと同時に、野生生物としてのデリケートな生態系への理解を深めることが求められています。