音楽ファンにとって待望の解禁は、手放しの喜びだけをもたらすわけではありません。SNS(XやInstagram)、5ちゃんねる、知恵袋といったコミュニティの生の声をつぶさに拾い上げると、複雑に揺れ動くサブスク解禁ネットの反応が観察されます。
ある男性アイドルグループが配信開始を迎えた当夜、Xのトレンドにはグループ名や楽曲名が数十件並び、「通学中に気軽に布教できる神環境が来た」「CDプレーヤーを引っ張り出さなくても高音質で聴ける」といった歓喜の声が溢れかえりました。手軽にプレイリストへ組み込める利便性は、ライト層へのリーチを劇的に広げ、休眠ファンを呼び戻す起爆剤として機能しています。
しかしその裏側で、長年にわたって初回限定盤や特典付きCDを買い支えてきた熱狂的ファンからは、切実な吐露も聞かれます。「私たちが何年もCDを買い集めてチャートを支えてきた苦労はなんだったのか」「いつでもタダ同然で聴けるようになった途端、あの特別だった熱量が薄れていくようで少し寂しい」という心理です。カルチャーとしてのプレミア感や、CDを手に取ったときの所有欲という心理的報酬が、利便性と引き換えに希薄化していくことへの違和感は決して無視できません。
さらに現場で深刻なのは「未解禁のまま時間が経過した楽曲が、若い世代の記憶から完全に消去されていく」という現実です。CDショップの店舗数が激減した現在、サブスクにない楽曲は「この世に存在しない音楽」として扱われかねません。名盤が歴史の暗がりに埋もれてしまう危機感と、手軽に消費されることへの抵抗感の間で、アーティストもファンも激しいジレンマに直面しています。