長年ファンに親しまれた「大江戸温泉物語(お台場)」が2026年9月に惜しまれつつ営業を終了した際、SNSでは「コロナ禍による赤字倒産か」といった根拠のない憶測が飛び交いました。しかし、公式発表資料および関係者の証言が示す大江戸温泉閉館理由の核心は、事業用定期借地権設定契約の満了にあります。
東京都との間で結ばれていた契約は、借地借家法で最長20年と定められた延長不可の枠組みでした。都側と幾度におよぶ再契約の交渉が重ねられたものの、法的な制約をクリアできず、建物を解体して更地で返還せざるを得なかったというのが冷厳な事実です。決してビジネスモデルの破綻による撤退ではありませんでした。
その後、経営陣が舵を切ったのは、全国の既存温泉旅館を再生・承継するアグレッシブな拡大路線でした。象徴的な転機となったのが大江戸温泉湯快リゾート統合です。両社が手を組んだことで、北海道から九州まで全国60施設以上を網羅する巨大チェーンが誕生。旧湯快リゾートの施設も順次リニューアルが行われ、バイキングのクオリティ底上げや施設オペレーションの統一が図られました。かつて東京のベイエリアに局所化していたファンコミュニティは、いまや全国規模の周遊ユーザーへと変貌を遂げています。