Web上の一部掲示板やSNSでは、「おばけを生きたまま油で揚げるのは残酷ではないか」「子どもにとってトラウマになるのではないか」という極端な言説が散見されることがあります。しかし、これは作品の表現構造を正しく理解していない誤解に基づいています。
せなけいこ氏が生前の自著やインタビューで一貫して語っていたのは、「大人の都合の良い道徳を押し付けず、子どもの素直な心に寄り添うこと」でした。本作に登場するおばけは、決して人間を呪ったり襲ったりする恐ろしい怪談の存在ではありません。どちらかといえば、食いしん坊で少しドジな、子どもの等身大の分身として描かれています。
また、本作を視覚的に優しく、温かみのある世界観に仕上げているのが、包装紙や手染め和紙を丁寧にちぎって重ね合わせた貼り絵絵本の手法です。緻密なCGや冷たい描線では出せない、紙のちぎり口の毛羽立ちや素朴なフォルムが、物語のドタバタ劇を過度な残酷さに落とさず、上質なナンセンス・コメディへと昇華させています。
おばけが衣まみれになるシーンも、油の熱さに慌てて逃げ出すシーンも、子どもにとっては「いたずらっ子が失敗して慌てて逃げ帰る」という普遍的なユーモアとして受容されます。大人が穿った見方をする必要はまったくありません。