尾瀬ヶ原観光の生命線となるのが、登山口へのアクセス体制だ。自然保護と渋滞緩和のため、群馬県側の主要拠点である「津奈木〜鳩待峠間」は、開山期間中のほぼ全日にわたってマイカー規制が敷かれている。自家用車で訪れる場合は、麓の「尾瀬戸倉(戸倉温泉街周辺)」にある有料駐車場に車を停め、そこから運行される鳩待峠アクセスバス(乗合バスまたは乗合タクシー)に乗り換える必要がある。
2026年現在、戸倉〜鳩待峠間のシャトルバスは早朝から頻発運行されており、片道運賃は大人1,300円前後、所要時間は約30分となっている。ハイシーズン中の週末は午前5時台からチケット売り場に行列ができるため、事前の電子チケット購入や小銭の準備など、現場でのスムーズな移動を心がけたい。また、公共交通機関を利用する場合は、JR上越新幹線の「上毛高原駅」やJR上越線の「沼田駅」から関越交通の路線バスを利用して戸倉へアクセスするルートが確立されている。
一方、日帰り登山では決して味わえない尾瀬の真髄を体験したいならば、山ノ鼻山小屋宿泊を強く推奨する。湿原の入口に位置する山ノ鼻地区には「尾瀬ロッジ」「至仏山荘」「山の鼻小屋」といった山小屋が営業しており、宿泊者だけに許された特権的な時間を提供してくれる。
夕刻、日帰り客が一斉に引き揚げたあとの尾瀬ヶ原は、人工的な音が完全に消え去り、風が草を揺らす音と鳥の鳴き声だけが響く異次元の世界へと変貌する。日没後の満天の星空、そして翌朝の夜明けとともに立ち込める朝霧(朝もや)が朝日に照らされて黄金色に輝く瞬間は、宿泊した者だけが生涯忘れることのできない光景として語り継ぐものだ。山小屋は完全予約制であり、水資源や環境保護の観点から風呂で石鹸・シャンプーの使用が禁止されているなど独自のルールがあるが、その不便さを補って余りある価値がそこには存在する。