文化財保護法において、歴史上・学術上価値が高い建造物はまず「重要文化財」に指定されます。その重要文化財の中で、さらに「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいまれな国民の宝」と認められたものだけが「国宝」へと昇格します。現在、全国に約2,500件ある建造物の重要文化財のうち、国宝に指定されているのは全体の1割強にすぎません。
かつて戦前には、名古屋城や岡山城、広島城、福山城、仙台城大手門なども「旧国宝」に指定されていましたが、太平洋戦争の空襲等によって相次いで焼失しました。戦後の新法(1950年制定の文化財保護法)のもとで改めて厳格な再審査が行われ、天守として国宝に指定されたのは以下の5城です。
- 姫路城(兵庫県姫路市):1951年指定。白漆喰総塗籠造の連立式天守群と、木造建築の最高峰を示す大天守・渡櫓群。1993年には法隆寺とともに日本初の世界文化遺産に登録。
- 松本城(長野県松本市):1952年指定。現存最古の五重六階天守であり、戦国期の乾小天守と泰平期の辰巳附櫓・月見櫓が連結した複合連結式天守の傑作。
- 犬山城(愛知県犬山市):1952年指定。木曽川沿いの断崖に立つ望楼型天守。現存最古級の望楼建築様式を今に伝える小規模ながら武骨な名城。
- 彦根城(滋賀県彦根市):1952年指定。多彩な破風(切破風、入母屋破風、唐破風)が調和する三層天守。附櫓や多聞櫓が完璧に連結する複合式構造。
- 松江城(島根県松江市):2015年指定。実戦的な漆黒の下見板張りと強固な通し柱構造。慶長16年(1611年)完成を証明する「祈祷札」の発見が決定打となり国宝へ昇格。
重要文化財に指定されている他の7天守(弘前城、丸岡城、備中松山城、丸亀城、伊予松山城、宇和島城、高知城)も極めて貴重な文化遺産ですが、国宝5城は「構造的な独自性」「当時の工法を完全に残している保存状態」「建築年代を裏付ける決定的な一次史料」という3つの高いハードルをすべてクリアした点において、学術的・法的に明確な一線を画しています。