カブトムシは、チョウやハチと同様に「卵→幼虫→蛹→成虫」という劇的な形態変化を遂げる完全変態の昆虫です。昆虫学の知見およびブリーダーの記録によると、卵から成虫までの期間はおよそ10か月から1年(約300〜350日)におよびます。年1化(1年で1世代が巡る)のサイクルを持っており、地上で活動する華々しい成虫の姿は、長い潜伏期間の最終章に位置づけられます。
メスの成虫は交尾後、夏の湿り気のある腐葉土深くに直径2〜3mm程度の白い球形の卵を1個ずつ丁寧に産み付けます。産卵直後の卵は米粒のように楕円形をしていますが、周囲の水分を吸収しながら次第に球形へと膨らみ、約2週間(10〜14日程度)で孵化(ふか)を迎えます。孵化したばかりの「1令幼虫」は透き通るような白さで、頭部だけが赤褐色を帯びており、体長は約8mm程度です。
幼虫期は脱皮を2回繰り返し、1令、2令、そして「3令幼虫(終令幼虫)」へと成長します。1令期間は約2〜3週間、2令期間は約3〜4週間と比較的短期間ですが、3令幼虫の期間は秋から冬、そして翌年の初夏に至るまでの約7〜8か月間という長丁場になります。カブトムシはこの3令幼虫の時期に土中の腐植土を大量に摂取し、体重を孵化時の数十倍にまで爆発的に増加させます。成虫になったときの体の大きさは、この3令幼虫時代にどれだけ良質な栄養を蓄えられたかによって100%決定され、成虫になってから角や体が大きくなることは一切ありません。
春を越えて初夏(5月中旬〜6月頃)を迎えると、幼虫は摂食を止め、体内の老廃物をすべて糞として排泄し、体が黄色く引き締まる「前蛹(ぜんよう)」となります。この前蛹期間は約7〜10日。その後、脱皮して神秘的な白い角や脚を持つ「蛹」となり、約3週間(15〜25日)の蛹期を経て、カブトムシの羽化時期である6月中旬から7月にかけて待望の成虫へと脱皮します。羽化後もすぐに地上に出てくるわけではなく、羽や外骨格が完全に硬化し内臓が成熟するまでの約1〜2週間は土中の蛹室でじっと静止します。そして夏の夜、満を持して地上へと這い出してくるのです。