料理の現場で受け継がれてきた「さしすせそ」は、単なる語呂合わせの暗記法ではありません。食材の細胞組織に味を均一に行き渡らせ、不要な臭みを抑えつつ芳醇な風味を残すために構築された、極めて合理的な調理プロセスです。
まず、和食の基本調味料一覧とその内訳を整理します。
- さ:砂糖(甘味をつける・素材を柔らかく保つ)
- し:塩(塩味をつける・水分を引き出して味を引き締める)
- す:酢(酸味をつける・防腐効果・さっぱりとした風味を与える)
- せ:醤油(「せうゆ」という旧仮名遣い由来/旨味と芳香を付与する)
- そ:味噌(「みそ」の『そ』/深いコクと豊かな風味を仕上げる)
この基本原則が生まれた背景には、日本料理が「素材の水分と調味料の濃度差」を巧みに利用して発達してきた歴史があります。食材内部の水分と調味料が触れ合う際、細胞膜を介して起きる物理現象をコントロールすることこそが、味付けの成否を分ける本質です。