チャ・スンウォンという役者の恐ろしさは、ダークサイドに振り切れたときの予測不能な爆発力にある。ディズニープラスで配信されたパク・フンジョン監督のシリーズ『暴君』では、元工作員イム・サン役として登場。穏やかな敬語を使いながら淡々と標的を排除していくその佇まいは、観る者の背筋を凍らせた。
ノワール映画の傑作『毒戦 BELIEVER』で見せたブライアン役の狂気も記憶に新しい。背中に巨大な火傷を負い、祈りを捧げながら暴力の引き金を引く謎めいた男。彼は定型化されがちな悪役に、独特の美学と奇妙なユーモアを注入することで、唯一無二のキャラクターへと昇華させてしまう。ジャンル映画のコードを軽やかに更新していくその姿は、まさに表現者の真骨頂といえる。