しかし、歴史研究・出版業界や専門家の間では、単なる「一番槍の武功」にとどまらない、より深層の仮説もささやかれている。その一つが、極秘任務を帯びた精鋭部隊、あるいは主君を守るための影武者にまつわる伝承だ。
戦国乱世において、敵の目を引きつける囮や、決死の殿軍(しんがり)を務める役目は、主君からの絶対的な信任がなければ任されない。歴史・民俗学のフィールドワークによれば、肥前の山間部や要衝を守護した武士団の中には、敵をかく乱するために主君の旗印を掲げて真っ先に突撃する特殊な役割を担った家臣が存在したという。「合戦の一番に立つ者」という名は、華々しい栄誉であると同時に、常に死と隣り合わせの特殊任務を引き受けた覚悟の象徴でもあったのだ。
激戦の地で主君の身代わりとなり、あるいは誰よりも過酷な突撃部隊を率いた一族。光と影が交錯する戦国史の暗部において、彼らは自らの生きた証としてこの名を背負い、後世へと命脈をつないだのではないか。単なる美談にとどまらない武士のリアリズムがそこにある。