人間を凍らせて未来へ送るというモチーフは、長らくエンターテインメントの格好の題材となってきた。トム・クルーズ主演の映画『バニラ・スカイ』では、冷凍睡眠中に見せられる明晰夢が狂気へと変貌していく心理的恐怖が描かれ、人々に技術の不気味さを強く印象づけた。
一方で、その冷徹な科学に血を通わせたのが、Netflixで配信され世界中で大きな反響を呼んだサイエンスドキュメンタリー『凍てつく希望: もう一度生きて』だ。小児がんでわずか2歳にして命を落としたタイの少女アインズ。悲嘆に暮れる科学者の両親は、娘の脳をアルコーで冷凍保存するという苦渋の決断を下す。宗教的倫理観、親のエゴ、そしてテクノロジーへの祈り。画面越しに突きつけられるのは、荒唐無稽なSFファンタジーではなく、愛する者を失った人間の生々しい葛藤と愛の証明だった。