暖簾の先にあるのは、昭和の面影を色濃く残す木目調のカウンターだ。かつては近隣の職人や学生たちが日々の腹を満たしていた典型的な大衆食堂だった。それが今や、全国の美食家たちが旅の目的地として指名するランドマークへと変貌を遂げている。
看板となるのは、代々受け継がれてきた秘伝のタレを絡めた郷土料理の数々。決して気取らない。だが、一口食べれば素材の輪郭が驚くほど鮮やかに立ち現れる。いわゆるB級グルメという枠組みで語られがちだが、その実態は洗練された手仕事の結晶だ。朝早くから市場で仕入れる新鮮な食材、季節ごとに微調整される出汁の塩分濃度。一見すると豪快な盛り付けの裏側に、緻密な計算と長年の勘が同居している。