この革新的なアプローチの根底には、クリエイティブ集団「ライゾマティクス」を牽引してきた真鍋大度としての圧倒的な蓄積がある。音と光、数学的アルゴリズム、そして人間の肉体を融合させてきた彼の実績は、パフォーミングアーツから巨大スタジアムの演出まで、常に世界の先頭を走ってきた。
だが、今回の映像プロジェクトで見せる演出の極意は、技術の誇示とは対極にある。監督が突き詰めているのは、観客の無意識に直接アクセスする「知覚のハッキング」だ。カット割りやカメラワークといった従来の文法に頼るのではなく、データが紡ぎ出す不可視の感情のうねりをスクリーンに定着させる。鑑賞者は物語を「観る」のではなく、登場人物の神経系に直接ダイブするような生々しい没入感を体験することになる。