水引とは、和紙を細く裂いて撚(よ)りをかけ、糊で固めて乾燥させた紙紐のことです。現代ではその上から極細の絹糸やフィルムを巻き、鮮やかな色彩や光沢を持たせた加工が施されています。
その歴史は飛鳥時代にまで遡ります。西暦607年、遣隋使の小野妹子が中国(隋)から持ち帰った献上品に、航海の無事を祈る魔除けとして「紅白に染め分けられた麻紐」が結ばれていたことが発祥とされています。これが宮中儀礼として定着し、平安時代には貴族の間で贈り物を紙で包み紐で結ぶ文化へと発展しました。
室町時代になると麻紐から和紙の紙縒り(こより)へと変化し、江戸時代には武士の髷(まげ)を結う「元結(もとゆい)」の製造技術を応用した強靭で美しい水引が誕生します。現在でも長野県飯田市は全国シェアの約70%を誇る一大産地であり、飯田水引は国の伝統的工芸品にも指定されるなど、単なる包装材を超えた美術工芸の領域に達しています。
水引が持つ本質的な役割は主に次の3つです。
- 未開封の証明(封印):贈り物が清浄な状態であり、途中で他人の手に触れられていないことを示す。
- 魔除け・邪気払い:神聖な紐で結ぶことで、外からの穢れを遮断する。
- 人と人を結び留める:紐を結ぶ行為そのものに、贈る相手との末永い絆や祈りを込める。