敷地内を訪れたなら、まず足を運ぶべきランドマークが能美市九谷焼美術館です。同館は歴史的名品を系統立てて展示する「五彩館」と、現代の制作現場を間近で見学・体験できる「体験館」や「職人工房」などで構成されています。古九谷から再興九谷、現代工芸に至る色彩の変遷を一気に俯瞰できる展示構成は、民間のギャラリー巡りだけでは得られない深い知的刺激をもたらします。
旅行者の満足度が特に高いのが、現場のプロが直接指導にあたる九谷焼絵付け体験です。あらかじめ素焼きされた湯呑み、小皿、マグカップなどに、九谷特有の和絵の具を用いて自由に筆を走らせることができます。骨描き(輪郭線)を施した後にガラス質の絵の具をぷっくりと盛る「盛り絵」の技法など、現地ならではの専門的な技法に触れられる点が、市販の絵の具キットとは決定的に異なります。
完成した作品は現地の専門窯で本焼き焼成され、おおむね約1〜2ヶ月後に自宅へ配送されます。旅が終わった後も日々の食卓に自分の手仕事が届くという時間差の楽しみこそが、リピーターを生み出す最大の原動力です。