ミナミの街を語る上で欠かせないのが、戦前から脈々と受け継がれてきた喫茶文化の重厚な地層である。無頼派の代表格として知られる作家・織田作之助は、この街の空気感を自著『夫婦善哉』をはじめとする数々の名作に描き出した。彼が愛したとされる庶民的な食文化とモダンなハイカラ趣味は、今も千日前や道頓堀周辺にたたずむ老舗の純喫茶へと受け継がれている。
深煎りのネルドリップコーヒーを静かに味わえる純喫茶の店内には、昭和の面影を残すベルベットのソファーやアンティークの調度品が今なお現役で鎮座する。単なる懐古趣味にとどまらず、若い世代にとっては新鮮な癒しの場として再評価が進む。