夜明けのブルース誕生秘話|五木ひろしと松山が紡いだ奇跡の現在地

夜明けのブルース誕生秘話|五木ひろしと松山が紡いだ奇跡の現在地

夜明けのブルース誕生秘話|五木ひろしと松山が紡いだ奇跡の現在地にまつわる興味深い視点を詳しく紐解きます。

『夜明けのブルース』の原点を紐解くうえで欠かせないのが、五木ひろし自身が抱いていた強い危機感と音楽的探求心です。長年トップを走り続けてきた五木は、2010年頃から演歌・歌謡曲が直面していた閉塞感を打破すべく、次代を担う新しいメロディを探し求めていました。そんな折、有線放送やラジオを通じて耳に飛び込んできたのが、愛媛県西条市出身のレーモンド松屋が歌う『安芸灘の風』でした。

哀愁漂うブルースフィーリングに、エレキギターのカッティングとタイトな8ビートが絡み合う斬新なサウンド。五木はその圧倒的なグルーヴ感に直感的な衝撃を受け、自らレーモンド松屋にコンタクトを取り、「自分にしか歌えない、男と女の粋な歌を書いてほしい」と熱烈なオファーを出したと当時の音楽関係者は述懐します。ここに、昭和歌謡のレジェンドと四国が生んだ異才による本格的なタッグが結成されました。

制作過程において最大の焦点となったのが、楽曲の舞台として愛媛県松山市が選ばれた驚きの理由です。通常、ご当地ソングは地方自治体の観光誘致やタイアップ事業として企画されるケースが少なくありません。しかし、本作の発想は完全にクリエイターの純粋な創作意欲から発露したものでした。

レーモンド松屋にとって、松山市最大のアーケード街である大街道や、四国有数の夜の社交場である二番町は、青春時代から肌で空気を感じてきた庭のような場所でした。観光地としての松山城や道後温泉ではなく、ネオンが揺れるバーのカウンター、タクシーが行き交う深夜の交差点、夜明け前の静けさに包まれるアーケード街。そこに生きる男女の息遣いをリアルに切り取るためには、松山の夜の街以外にあり得なかったのです。五木もこのローカルかつ普遍的な大人の色香に深く共鳴し、情緒的な地名を散りばめた『夜明けのブルース』の歌詞が完成しました。

林 結菜
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林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。