ネット上の情報や民間療法において「免疫力を高めれば抗生物質に頼らなくても自然治癒する」といった言説が散見されますが、これは医学的に極めて危険な誤認です。ウイルスが原因である一般的な風邪には抗生物質が無効ですが、溶連菌は明確な「細菌」であり、細菌感染症の制圧には標的となる抗菌薬の投与が医学的標準治療です。
特に危険なのが、「処方された薬を2〜3日飲んで喉の痛みが消えたから、残りの抗生剤を飲むのをやめた」という独断です。溶連菌の除菌には、第一選択薬であるペニシリン系抗生物質を通常10日間(薬剤の種類によっては7〜14日間)にわたり連続服用することが厳格に定められています。服用開始後48時間ほどで菌の活動性は大幅に抑えられ症状は劇的に改善しますが、この段階では扁桃深部に菌が残存しています。途中で服薬を放棄すると生き残った菌が再び増殖し、薬剤耐性を獲得するだけでなく、前述した溶連菌放置の後遺症であるリウマチ熱や腎炎を誘発する引き金になります。
もうひとつの盲点は「治癒後の検尿」です。小児科では溶連菌感染症の治療終了後、2〜3週間を目安に尿検査を実施して血尿やタンパク尿が出ていないか(腎炎を発症していないか)を確認するルーチンが確立されています。しかし大人の場合、内科受診後に喉が治ると再診に訪れない人が大多数を占めます。気づかぬうちに無症候性の腎炎が進行し、数年後の健康診断で慢性腎不全の兆候を指摘される事態を防ぐためにも、大人の感染者こそ治癒後2〜3週間時点での自主的な検尿チェックが欠かせません。